No.43 アキンボ by サム エヴァン ターナー
アキンボ !
[SAM EVAN TURNER]
ROCK EXOTICA AKIMBO
はじめに
第一印象
どのように機能するか
樹上での使用感
使いこなす秘訣 & 裏技
ROCK EXOTICA AKIMBO
”はみだし” 製造業者たちが作り上げた美しくも斬新なマルチセンダー
はじめに
今は正にアーボリスト用具の黄金時代真っ只中と感じさせられます。
今まではマルチセンダー、いわゆるシングルロープで上りにも下にも使える器具というアイデアは特異な存在として考えられてきました。
ジェイミーメリット氏デザイン、ロックエキゾチカ製造によるこの『アキンボ』の登場によってそんな考えは無くなってしまうと思われます。
今後は大手の製造業者が軒並みこの手の商品を発表してくるのでは無いでしょうか。
誇大妄想はさて置いて、まずはこのアキンボを細部にわたりじっくり観察してみましょう。
第一印象
アキンボは重さと大きさの比率が非常に良く、その軽量さとコンパクトなサイズがすでに品質と耐久性の高さを物語っていると思います。
そんな優秀さから一旦使い始めれば手放すことが出来なくなること請け合いです。
主にボルトで組み上げられアルマイト処理によって滑らかに仕上げられたアルミボディー(素材剥き出しではもっと地味な外観になっていたはずです)。
初めて手にしたユーザーはまず背中が割れてオープンする機構に驚かされることでしょう。
この動作(下図)は重要なデザインの1つです。
ロープ途中にセット出来ると同時に高レベルの安全性を実現したこの機構を思い描いて実現させたメリット氏の功績は賞賛に値します。
詳しく説明すると、荷重が掛かった状態では絶対に開かず荷重ゼロでも開きにくい、開け方をマスターすれば簡単に開閉できるというデザインなのです。
どのように機能するか
今までに登場しているいくつかのマルチセンダー同様、アキンボも複数の可動部により構成されています。
登るときはそれぞれの可動部が閉じることによりロープが自由に流れます。
メインアタッチメントポイントに体重が乗ると(荷重が掛かると)2つのコントロールアームが動いてロープを曲げていきます。
それぞれのアームに掛かる荷重が平衡点に達し2点でクライマーを安全に確保します(但しきちんと調整してある場合ですが)。
下降する時はトップアームを指で押し下げます。
2つのアームが閉じていくと下方に滑り出します。
スピードはトップアームの押し加減で調整します。
注目すべき特色 ー トップ&ボトムアームに付いた調整範囲の広いフリクションボラード。
位置決ピンが付いた革新的ボラードはトップアームで[A - G]の7段、ロアーアームで[1 - 7]の7段、計49通りの調整により様々なロープに適合することができます。
ロックエキゾチカ は解りやすいユーザーマニュアルを用意しました。
そこには安全に使うための正しいセッティング方法が記されています。
自分で調整する時はこの手順にしっかり従って下さい。
次は話題になったユーザーマニュアル内にある『推奨ロープリスト』について。メーカー側が明確に適正ロープのリスト(同時に表示されていないものは不適正ロープ)を提示した事について、多くのアーボリストたちが最初は戸惑いました。
意を決して購入したら厳格な規定が指示されていた、という事に対する怒りの感情はなかなか拭い去れませんでした。
しかしながら意見交換やさらに詳しい情報の提示によって具体的な内容が分かってきました。
認証済ロープの限定は最初ユーザーの自由を犠牲にしてメーカーのリスク回避を表しているように見えましたが、実際はかなり違います。
このリストで認証された各ロープに対してロックエキゾチカは長い時間を掛けて、個人では安全に確認する事が不可能な内容のテストを繰り返して決定したのです。
重大な事に静荷重で優れている多くのロープが衝撃荷重下のテストで不合格になりました。
ジョエル ガードナー(S.C.A.M リダイレクトで有名)はこのリストについてこのように言い表しました。
『ヒッチコードとクライミングロープの組み合わせに対する推奨荷重というものを私は見たことがありません。だからと言ってヒッチコードの使用がより危険になる訳ではありません。ロックエキゾチカは一部のよく使われるロープをテストして絶対滑らない安全使用荷重を導き出したと思われます。』
『リストに載っていないロープの使用が安全性の低下に即繋がる訳では無いと思います。』
実際的な事柄 ー このリストは完成している訳ではありません。
自分のロープが載っていなくてもがっかりしないで下さい。
これから新たにテストされリストに加えられるロープが出てくるはずです。
樹上での使用感
アキンボを使ってすぐに気がつく事は体を預けた時に遊びがほとんど無いことです。
非常にコンパクトなボディと相まって優れたクライミングツールと言えます。
同時にスパークライミングにも適しています。
アキンボのコンパクトなサイズの利点は完全に開いた時の状態と完全に閉じた時の違いがほとんど感じられないことです。
これはダイナミックな操作中、特に正しくセットされていない時に、スムーズで制御された動きを保とうとする時の学習曲線を表しています。
私の経験から言ってコントロールに関しては片手でアキンボを操作し反対の手で他の器具を使って下降する時と同じように下に伸びるロープを掴んでブレーキを掛けるようにするのが最良だと思います。
使いこなす秘訣 & 裏技
・DMMのグロメットをメインアタッチメントポイントにはめ込むことができます(ちょっと苦労しますが)。グロメットが付いていればどんなカラビナもガタつかず、横向きになる事も防げます。
・アキンボは非常に精密に加工されていますので、汚れたロープ、特にヤニが付いたロープをセットするのは避けてほしいと思います。通常よりもっと頻繁にロープを洗う必要があるかも知れません。アキンボ本体を洗った後にはカラビナでも使っている軽い潤滑油を付けておけば正常な動作を長く保てます。
・自分のクライミングテクニックを調整する必要があるかも知れません。特に上る時の姿勢です。姿勢によってはテンディングポイント(体に連結してデバイスを引き上げるポイント)がすぐに外れてしまいます。これはテンディングポイントに下向きの力を掛けて突然トップアームが解放されるのを防ぐためにメーカーが考案した機構です。このイラつく不意の外れもコツを掴めば登高を終えた時に手を使わないで外すことができる利点に昇華することができるのです。
・どのロープを使っても完璧なセッティングの条件は非常に変わります。それには様々な要因、例えばクライマーの体重、ロープの状態(古さ、汚れ具合、湿り具合)、クライマーの好み、器具の摩耗具合、等々が関わってきます。クライマー同士がその情報を共有し始めています。末尾のリンクでその1つを見ることができます。 それはトップアームとボトムアームに均等な荷重を分散できる条件を見つけることが出来たかという事だと個人的には思っています。逆にそれができていない場合はギクシャクした動作になってしまうという事です。
【仕 様】
適正ロープ径 | 11.5 - 13 [mm]
重さ [本体] | 0.261 [kg]
使用荷重 [WLL] | 100 or 130 [kg]
ロープ途中への装着 | 可能
ボラードの調整 [トップ & ボトム] | 可能
交換可能部品 | なし
CE 規格 | 現在申請中
リンク
Rock Exotica Akimbo Product Page
Akimbo Setting Spreadsheet [RED] 2
1 Dependent upon rope selection.
2 In the interests of transparency it was considered prudent to note that this was created by the author.
3 As above.