top of page
paulspage2018.jpg

​No.16  アンカーのオプション

作業はスローラインをセットする前からリスクアセスメントを行い段取りをじっくり立てておく必要があります。

いくつか選択できるツリークライミングシステムの中から、仕事全体をうまくカバーできるものを選ばなければなりません。

現場が違えば木も他の条件も違ってきますからクライミングシステムも当然変えるべきです。

スローラインがセットされた時点ですでにシステムがしっかり選ばれているべきです。

2:1システム(DdRT=MRS)は地上からセットが可能で、即ワークポジショニングに使うことができます。

1:1システム(SRT=SRS)もロープレンチを使えばアクセスのみならずワークポジショニングにも使えるシステムです。

2:1システム1:1システム共にまずはアクセス用にセットされます。

クライマーは木に登ってからワークポジショニング用に2本目のロープをセットするかどうか選択します。

アンカーポイントまで上って、作業に入る前にそこからもう1度リスクアセスメントをすれば、見えなかった空洞、弱いアタッチメントポイント、危害を加えそうな動物や昆虫等が発見できます。

 

木の高い場所にアンカーポイントを作ることは、その木に対して大きな負担を掛けることになります。

木はツリークライマーのために成長した訳ではありません。

木に登る時はその木の本質的な強さと弱さをよく考えなければなりません。

それからテコの力も無視してはいけません。

アンカーはできるだけ上向きに伸びた枝に取る方が木に掛ける負担も少なくできます。

 

木は生き物ですからリスの巣穴、キノコ、またはその他の要因によって弱っている可能性があります。

 

2:1システムのように枝にアンカーを取った場合、アンカーに掛かる荷重はクライマーの体重と等しくなります。

クライマーが動くとその反動により荷重が増えます。

ロープが上の枝を通って幹の根元で固定されるトランクアンカーの場合、上の枝に掛かる荷重はクライマーの体重の2倍になります。

クライマーが動くと更に大きな荷重が掛かります。

スクリーンショット 2021-11-21 14.43.00.png

アンカーセッティング

チョーカー

ランニングボーラインを使いロープをチョーカーにして木の枝にセットする事ができます。

これは地上から回収はできませんが、ロープウォーキング・システムを併用すれば非常に迅速で楽なアクセスを可能にします。

スクリーンショット 2021-11-21 14.47.32.png

トゥーフェルベルガー『フィンブルセーバー』

フンブルセーバーを使えば

ⅰ)樹皮へのダメージがゼロ 

ⅱ)ロープの摩耗がゼロ 

ⅲ)地上からの回収可能 

ⅳ)ワーキングエンドのコントロール(スプライス) 

ⅴ)1:1システムや3:1システムへの移行が可能 

 

という有利な点があります。

2:1システムはアーボリストに1番使われるシステムですが、それに捕われる必要はありません。

1:1、2:1、3:1とシステム移行のためのプラットフォームと考えればいいのです。

スクリーンショット 2021-11-21 14.47.41.png

ART『ロープガイド』

プーリーを使ったこのアンカーは摩擦のないスムーズな登り下り、そして左右の動きを提供してくれます。

ロープガイドは2:1システム用の器具です。こちらに使用法があります。(英語の解説) http://www.youtube.com/watch?v=kKK3omXV1Lk

これら3つの器具は枝がなくても幹に取り付けることができますが、特にロープガイドは回収が確実にできる点で優れています。

ロープエンドに付けた回収ボールがトラピーズリンク(5)に引っ掛かると(ロープは(1)(2)を通過して(5)に来ます)カミングデバイス(4)はロープの余った部分(3)を引きずり下ろされて木との間に隙き間を作りプーリー(2)がリングを通りやすくするのです。

ダブルスナッパー(1)を取り付けるとこのシステムを落下させずに地上まで静かに吊り下ろす事ができます。

細部まで機能的にデザインされたこのロープガイドを使えば、セットから作業、回収に至るまで全てにおいて非常に効率のよい仕事ができるでしょう。

アンカーの衝撃吸収

 

ロッククライミングや一般的な高所作業においてはロープやそのセットの中に衝撃を柔らげるシステムを持っています。

ロッククライミングに使うロープはダイナミックロープなので衝撃をたやすく吸収してくれます

高所作業ではセミスタティック・カーンマントルロープ(破断荷重の20%の負荷で3%の伸び率)を使いますが、落下するとアッセンダーのカムに付いた歯が薄いカバーを引き裂くことで衝撃を吸収して止まります。

わたしたちアーボリストはそれとは違う構造のロープにぶら下がったり下がらなかったりという動作をくりかえしますから『常にロープのたるみをなくす』ことが衝撃に対処する大事な方法になります。

50cm以上のたるみを作らないのが原則です。

絶え間なくたるみを取ることと注意深い用具の組合わせによって衝撃吸収ができるのです。

各用具とロープの知識が大切なカギになります。

ODSKではスプライシング講座を開いていますが、そこはロープの構造とよりよい使用法を学ぶよい機会になります。

 

ツリーマジニアーズとトゥーフェルベルガーのチームはポリエステルカバー/ダイニーマコアのアクセスロープとダイナミックロープのフットロッキングプルージックの組合わせによるヨーロッパ規格適合のフットロックシステムを発売しました。

ダイニーマは鋼鉄のように強くまた伸びませんからダイナミックなプルージックとの組合わせによって衝撃を吸収するわけです。  

このような組合わせは非常に面白い方法だと思います。

 

医学的なデータによると人間に掛かる荷重が600kgを越えると体に深刻なダメージが与えられるということです。

体重70kgのクライマーも落下によって簡単に1000kg以上の衝撃がかかってしまいますから新人クライマーには物理の簡単な基礎を学ぶように勧めています。

 

自分のクライミングシステムを確率したいならアドバイスをしっかり聞くように!

トランクアンカー

 

クライミングロープが何本もの枝を通ってからボトムアンカーに結ばれていれば、衝撃はこの木全体で吸収される事になります。

トランクアンカーを使う方法では木の上にアンカーを取る場合よりずっと大きな荷重がロープの乗った枝にかかりますから、このように複数の枝に荷重を分散することは非常に有効な解決策です。

新人クライマーにはロープをセットする角度と荷重の関係についても学ぶように勧めています。

クライミング、リギング双方にとって大切な知識だからです。

トランクアンカーのセットには色々なやり方がありますが、僕の使っている方法を紹介しましょう。 http://vimeo.com/85415643

リギングハブにペツルのID等のビレイデバイスを取り付ければレスキューにも使えますが、横方向に向きやすいカラビナをコネクターとして使うことを考慮しなければなりません。(カラビナは横方向の荷重に弱い)

 

ビレイデバイスはレスキューシステムのほんの一部です。

クライマーが木の上でケガをした場合、大抵訓練を受けたレスキュークライマーが登っていく必要が生じます。

というのは:

ⅰ)クライマーはランヤードを木に掛けた状態でケガをすることが多く、それを外す必要がある。

ⅱ)ケガをした/昏睡状態のクライマーは上半身がのけぞった状態になった場合、その体やツールを途中の枝等に引っ掛けずに下ろすのは非常に難しくなる。

ⅲ)地上からではケガをしたクライマーのロープがどうなっているか確認しにくい。

 

これら3つのポイントを考えただけでも『トランクビレイ』のみに頼ることはできないのではないでしょうか。

アーバンフォレストリー」さんは『レスキュー訓練』を開催しています。そちらへの参加をお勧めします。

トランクビレイが役に立つのは、フットロックやカム式アッセンダーのように下降するため器具を付け替える必要があるシステムで登っていてハチに襲われた時などです。グランドワーカーが即座にクライマーを下ろすことができます。

スクリーンショット 2021-11-21 14.47.53.png

セルフビレイアンカーのタイイング/セッティング

メカニカルデバイスを使用する場合、添付マニュアルに従ってロープを選択しデバイスのセッティングをしてください。

ヒッチコードを使用する場合、数多くの巻き方がありますが、その中で僕が最も気に入っている巻き方(ヒッチ)を紹介します。

 

『バルドタイン・トレス (VT)』

 

ⅰ)ヒッチコードをクライミングロープに下から上へ3~4回巻きます。

ⅱ)上から下ろして巻きはじめの下を通します。

ⅲ)2本の足をエンドまで交差させていきます。

ⅳ)エンドにプーリーとカラビナを取り付けます。

 

クライミングロープのワーキングエンドをプーリーに連結すれば2:1(DdRT)システムに、ロープレンチを追加してワーキングエンドをトランクアンカーに連結すれば1:1(SRT)システムになります。

http://vimeo.com/85413328

 

巻き数や交差の回数を変えるとフリクション(摩擦力)が変わります。ヒッチの効き具合がクライマーの安全を左右しますから、登っている間クライマーは常にヒッチの働きに注意していなければなりません。ヒッチの管理はクライマーの自己責任ですから、しっかり身に付くまではアドバイスを受け練習してください。

bottom of page