No.12 スローラインについて
今回はスローラインのセットとその応用について話をします。


スローライン
僕のお気に入りのスティッフラインを紹介します。
スティッフラインはダイニーマのカバーの中に単一繊維の釣糸が入ったスローラインです。
真円の断面は大変ユニークで、空気抵抗が少なくてスーっと枝を越えて飛び越えます。
単一繊維なのでキューブの中でも絡みにくいラインです。エンドがちがった色なのでエンドを探しやすくなっています。
お勧めのスローラインです。


現在色々なスローラインがありますが、どれも極めて絡まりやすい。
使う前にラインをよく伸ばしておけば絡まりにくくなります。
ラインをしっかりした枝などに回してから両端を持ってしっかり引っ張っておきます。


スローウェイト
スローウェイトには様々な種類、重さのものがあります。
多くは中にショットガンに使われる鉛の粒が入っています。
重さは通常6オンス(170g)~16オンス(450g)です。
軽いウェイトのほうが高く投げられますが、ざらざらした枝に掛かると下りなくなります。
形も丸いものからより流線型に近いものまであります。
使い道に応じていくつか持っていた方が良いと思います。
スローウェイトはラインの両端に付けてスローラインキューブ等のボックスに入れておきます。


スローラインキューブ
サイズは1辺が50cm程度のものが使い良いと思います。
ホームセンターで売っているプラスチックの箱等なら安く買えますが、アーボリスト用のスローラインキューブは中にウェイト収納用のポケットがあったり、コンパクトにたたんでハーネスにぶら下げられるようになっています。
その中でも特にファルテーマのキューブが一番優れて います。
(Stein等値段の安いキューブほど比較的早く痛んできます。)
※2019年現在はFTCのマテリオサックが人気です。
スローイング
スローイングは、下手投げでも、上手投げでも、ヘリコプターみたいに回して投げても、自分の投げやすい方法で構いませんが、悪い投げ方は修正する必要があります。
動作の細かい変化が結果を大きく変えます。
手首を出来るだけリラックスさせて地面にしっかり足をつけて体全体で投げなさい、と言われています。
木の一点に集中しすぎると、リラックスして投げるより成功率は悪くなります。
直線的な動きより、円弧を描くように投げてみて下さい。
ウェイトからラインを持つ位置の長さやウェイトの重さを変えてみましょう。
僕はラインを持つ場所にスリップノットを結んで滑り止めにしラインを握りしめずに軽く持つようにしています。
うまく投げられたときは力みなく気持ちよく投げられているはずです。
その感じを覚えておきましょう。
吉見さんは非常に上手に投げますが、彼のスローイングを見ているだけでいろいろ学べます。
チャンスがある度に彼のモーションを盗んでいます。
練習・練習と積み重ねていけば、メインロープのセッティングだけでなく様々な用途にスローラインが使えるようになります。




2本のスローラインを使ったテクニック
図のようにスローラインが掛かってしまう事がよくあります。
ラインが小枝に絡まってしまい、外そうとして引っ張ると掛けたい枝又(X印)から外れる恐れがあるという状態です。
この時スローラインがもう1セットあると簡単にこの状態を解決する事が出来ます。

1.上にぶら下がったスローウェイトNo.1を地面まで下ろします。

2.そのままスローラインを引き続け反対側に付つけてあるスローウェイトNo.2を引き上げる準備をします。もう1つのスローキューブを開けスローウェイトNo.3を出します。

3.スローウェイトNo.3をNo.2に連結します。

4.1本目のスローラインを引いてスローウェイトNo.2とNo.3を吊り上げていきます。目標の枝又近くに達したら少しずつ揺すりながらスローウェイトNo.3を枝又に掛けてやります。

5.これで2本目のスローラインが目標の枝又に掛かりました。スローラインNo.2とNo.3を地上まで下ろします。

6.スローウェイトNo.2を外してから1本目のスローラインを回収します。2本目のスローラインを使ってクライミングロープがセットできるようになりました。

挟まったスローウェイト/フリクションセーバーの取り外しと回収
スローウェイトやフリクションセーバーが木の上に引っかかってしまうことほど苛立たしい事はありません。
外すのに余計な時間が掛かってしまいます。
そんな時このテクニックが役に立ちます。
下図の赤いスローウェイト(またはフリクションセーバー)を引きずり下ろさずに持ち上げるのがポイントです。

2本目のスローラインを目標の真上か引き上げれば外れそうな方向にセットします。
スローウェイトを地上に下ろし引っかかったロープ/スローラインにカラビナで取り付けて引き上げます。

スローウェイト/フリクションセーバーを見事に引き上げることが出来たら万々歳です!

スローウェイトを外してから、1本目、2本目のスローラインを順番に回収して作業終了です。
トラバースの方法
木から木へ移る(トラバース)ためにはスローラインを隣の木の枝又にかけてからウェイトを自分の方に引き寄せなければなりません。
その方法には以下の3通りがあります。
1.スイング(振り子)
ラインをクイッと引っ張ってウェイトを振る。
ウェイトが垂直になった瞬間にさらにクイッと引っ張って振れを大きくする。
ウェイトが自分の所に届くまでそれを続けます。
単一繊維でできた前述のスティッフラインは丸い断面形状のため荒い樹皮に掛かってもスムーズに動いてスイングさせやすく、遠くまで飛びやすいスローラインです。

2.グラップネルフック
クライマーからスローラインを掛けた枝又までの距離が地面からの高さよりも短ければグラップネルフックをスローラインに固定してウェイトを引き寄せる事ができます。

スローウェイトが枝又のすぐ下にぶら下がった状態の場所で、手元にスリップノットを結びます。
次にスリップノットが枝又に到着するまでウェイトを下ろします。
これによってスローラインの長さがウェイトが自分に届くだけ充分に長くなっているわけです。
途中に邪魔な枝があればウェイトをスイングさせて乗り越えさせておきます。

グラップネルフックをスローラインに固定します。

スローウェイトが自重で下りていき、それによってグラップネルフックがラインに引き寄せられます。
そこでフックを振ってラインに引っ掛けます。
スローウェイトを自分の所まで引き寄せます。

スローウェイトの垂れ下がった高さが充分であればウェイトは自分の所まで届きます。
しかし高さが充分になくて届かなかった場合はもう1つの方法を使う事になります。


3.グラップネルフック+スローライン+カラビナ
グラップネルフックをスローラインから外します。(外すのは面倒ですから、事前にしっかり確認して方法を選びましょう。)
もう一度スローウェイトを枝又まで引き上げます。カラビナをムンターヒッチでスローラインに結びます。そこにグラップネルフックともう1本のスローラインを取り付けます。
スローウェイトが自重で下りていき、それによってグラップネルフックがラインに引き寄せられます。そこでフックを振ってラインに引っ掛けます。


2本目のスローラインを引っ張ってスローウェイトを引き寄せます。途中でフックがウェイトに到達してもムンターヒッチで結ばれているためカラビナがスローラインを滑って手元に戻ってきます。
これがトラバースセットの1例です。スローラインをフライフィッシングのリールに巻けばウェイトを投げると自然にラインを送り出してくれます。
